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【3月の花見】

[令和1年5月5日]
横須賀老人ホーム
“何も言わないからって、何も考えてないなんて思わないでくれよ”
極めて個人的かつ古い話で恐縮なのですが、これは、父方の祖父が同室の患者を<あいつの事だからな>とでも言いたげに見やりながら言った言葉です。その昔、そう30年以上も前になりますか、私は生意気盛りの10代半ば、入院中の祖父に面会の最中でした。桜の季節の事です。

今年も横老は花見に出掛けました。3月25、27、28日の三度に分けて神明第二公園へと繰り出したのです。
まだまだ満開とは言えない開花状況ではありましたが、その後の、季節が逆戻りしたかのような冷え込みを思えば、なかなかに快適な花見だったのではないでしょうか。
昨年、別の記事でも同じような事を言いましたが、行事というのは何もかもが万全である必要は無く、いつもと少し違っていればそれで充分なのではないかと思います。勿論満開の桜はいつだって大歓迎ですが、そうそう上手く行かないのも確かです。それでも、とにかく春が来たことに変わりはありません。
どうかするとつい忘れてしまう事ですが、空がどんなに厚い雲に覆われていようとも、いかにとんでもない量の雨が降っていようとも、その向こう側で太陽は普段と変わらぬ位置でザリザリと燃えているのです。
何分咲きでも桜は桜――また来年も是非花見に参りましょう。

“こんなに高い所から桜を見下ろすのは初めてかもしれんなぁ……”
病室のある6階から外を眺めながら、祖父はこうも言っていました。
“何も言わないのは、何を言えば良いのか分からないからでもなければ、納得して何一つ不満が無いからでもなくて、どうにもこうにも見込みは無いから呆れ果ててる場合だってあるんだぞ。そいつを忘れない事だ”
その後、祖父は程なく退院し、半年と経たぬうちに世を去りました。
祖父が何を思ってあんな事を言い出したのかは謎のままですが、桜の季節になると決まってその時の言葉が思い出されます。脳に少し混乱が生じ始めていたかもしれない祖父のその言葉が、実に的を射ていると深く頷かざるを得ないような出来事が、時に起こるものなのだなぁと思う今日この頃です。
[令和1年5月5日]
横須賀老人ホーム
“何も言わないからって、何も考えてないなんて思わないでくれよ”
極めて個人的かつ古い話で恐縮なのですが、これは、父方の祖父が同室の患者を<あいつの事だからな>とでも言いたげに見やりながら言った言葉です。その昔、そう30年以上も前になりますか、私は生意気盛りの10代半ば、入院中の祖父に面会の最中でした。桜の季節の事です。

今年も横老は花見に出掛けました。3月25、27、28日の三度に分けて神明第二公園へと繰り出したのです。
まだまだ満開とは言えない開花状況ではありましたが、その後の、季節が逆戻りしたかのような冷え込みを思えば、なかなかに快適な花見だったのではないでしょうか。
昨年、別の記事でも同じような事を言いましたが、行事というのは何もかもが万全である必要は無く、いつもと少し違っていればそれで充分なのではないかと思います。勿論満開の桜はいつだって大歓迎ですが、そうそう上手く行かないのも確かです。それでも、とにかく春が来たことに変わりはありません。
どうかするとつい忘れてしまう事ですが、空がどんなに厚い雲に覆われていようとも、いかにとんでもない量の雨が降っていようとも、その向こう側で太陽は普段と変わらぬ位置でザリザリと燃えているのです。
何分咲きでも桜は桜――また来年も是非花見に参りましょう。

“こんなに高い所から桜を見下ろすのは初めてかもしれんなぁ……”
病室のある6階から外を眺めながら、祖父はこうも言っていました。
“何も言わないのは、何を言えば良いのか分からないからでもなければ、納得して何一つ不満が無いからでもなくて、どうにもこうにも見込みは無いから呆れ果ててる場合だってあるんだぞ。そいつを忘れない事だ”
その後、祖父は程なく退院し、半年と経たぬうちに世を去りました。
祖父が何を思ってあんな事を言い出したのかは謎のままですが、桜の季節になると決まってその時の言葉が思い出されます。脳に少し混乱が生じ始めていたかもしれない祖父のその言葉が、実に的を射ていると深く頷かざるを得ないような出来事が、時に起こるものなのだなぁと思う今日この頃です。

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